事務所ニュース:No.91 2023年4月25日発行

国の原発事故の責任を否定した、いわき市民訴訟仙台高裁判決

弁護士 吉田悌一郎

 本年3月10日、仙台高等裁判所は、いわき市民訴訟について、国の責任を否定し、
東京電力に対してのみ賠償を命じる判決を出しました。

 この裁判は、2011年3月11日に発生した福島第一原発事故の被害者である福島県いわき市民約1500人が、原発事故の加害者である国と東京電力を被告として提訴したものです。
 2021年3月26日に出された第一審の判決(福島地裁いわき支部)は、国の責任を認め、国及び東電に対して総額2億円余りの賠償を命じました。
 これに対し、控訴審である今回の仙台高裁判決は、最終的に国の責任を否定するものでした。すなわち、国が東電に対して、技術基準適合命令を発したとしても、「津波に対する防護措置について幅のある可能性があり、とられる防護措置の内容によっては、必ず本件津波に対して施設の浸水を防ぐことができない」とし、因果関係を否定したのです。

 しかしながら、これは、本来は原子炉の安全性確保及びそのための防護措置の検討・確定は、原子力事業者と国の責任領域であるにもかかわらず、原告らに不当に高い立証責任を求めるもので不当であるのみならず、国が義務を果たさなければ果たさないほど、原告らの立証が困難になるものであり、極めて不当な判決です。
 また、東京電力の責任は認めて、その損害論において、損害の因果関係の及ぶ期間として、一般の大人については2011年12月末まで、子どもや妊婦については、翌2012年8月末までを因果関係として認定し、第一審で認められた範囲よりも上回っている点は評価できます。
 しかし、それでも、原告らが受けた被害をまだまだ過小評価するものであり、この判決の損害認定でも、到底満足できるものではありません。

 そこで、この裁判は、今後最高裁に舞台を移し、国の責任を認めさせる判決を勝ち取るべく、引き続きたたかいは続きます。

コラム:JAZZ名盤紹介~ウェイン・ショーターを偲んで

弁護士 髙橋 右京

 先日、私の大好きなサックス奏者、ウェイン・ショーターがこの世を去りました。ここでは、ショーターを偲んで、私が愛聴してきた彼のアルバムを1枚、紹介させていただきます。

 ウェイン・ショーターは、テナー&ソプラノ・サックス奏者で、マイルス・デイビス・クァルテット、ウェザー・レポートなどに所属し、ジャズ界のメイン・ストリームを歩んできた超大物。しかし、その音楽性は極めて個性的。その演奏は、ミステリアスというかSF的というか、不可思議な魅力に満ちています。
 彼の作品の中で、私がもっとも愛聴しているのが、今回ご紹介する「NATIVE DANCER」。ブラジルのシンガー、ミルトン・ナシメントとのコラボ作品です。
 このアルバムは、いわゆる典型的なジャズではなく、ブラジルの大自然を思わせる楽園的な雰囲気の音楽で、「天使の歌声」と称されるナシメントの美声と、ショーターのサックスが見事に溶け合っています。特に4曲目の「Miracle Of The Fishes」の終盤、ナシメントのコーラスをバックにショーターが、ソロの途中でテナーからソプラノに持ち替えていっきに
飛翔する様は、感動的です。
 ちょっと変わっていますが、決して難解な音楽ではありませんので、聴いたことのない方はぜひ。暑くなるこれからの季節におすすめです。

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