事務所ニュース:No.81 2018年4月1日発行

3・22 避難者訴訟判決(福島地裁いわき支部)

弁護士 米倉  勉

 私が所属する福島原発被害弁護団では、福島地裁いわき支部で、多くの避難者を原告とする集団訴訟を提起してきました。その第1陣(216人)の判決が、3月22日に言い渡されました。

地域での生活を奪われるということ

 それまで、慣れ親しんだ地域で、平和で幸福な生活を送っていた住民が、突然にそれまでの生活と生業のすべてを置いて、遠方に避難することを強いられるというのは、大変な出来事です。しかも、その理由は地域全体の放射能汚染であり、何十年たっても元の自然環境には戻らないという、地域環境の破壊です。つまり、ある地域が突然「人の住めない土地」になってしまい、人々の生活が永続的に、丸ごと奪われる。こんな事態はこれまで起きたことがない、未曽有の出来事です。
 この事態は、避難を強いられた人々に、様々な被害や負担を負わせました。住宅、田畑、家財などの一切合切が放射能に汚染して使えなくなりました。そこで営んでいた農業・商業などの事業活動、学業、その他一切の社会的な営みが途絶えました。これらによる被害は甚大です。
 また、こうした目に見える有形の被害だけではなく、地域社会には、人々の生活を支える様々な機能があり、そうした地域の働きによる利益を享受することで生活が成り立っています。そうした地域社会生活からの恵みを失うという無形の被害もまた重大です。そして、そのような地域社会の一員として役割を果たし、人格を形成し、人生を築いてきた日々の成果を奪われたことの喪失感、精神的苦痛は重大です。
 避難生活が不安と心労の多い、苦難に満ちた毎日であることは容易に想像ができます。しかしそれだけではなく、このような「故郷を奪われた」ことによる無形の損害や精神的苦痛を、正当に評価することが求められます。これが未曽有の放射能公害における「被害の核心」だと考えます。

判決の内容

 この裁判では、こうした精神的損害の賠償として、「避難慰謝料」と「故郷喪失慰謝料」という2つの慰謝料の支払いを求めていました。上記の、2つの被害に対応するものです。
 判決は、こうした2つの損害があることを認めましたが、実際に支払いを命じた金額は、非常に少額にとどまりました。
 判決は、2つの慰謝料を別々に評価・算定するのではなく、まとめて包括的に算定するとしました。そして、未だに避難指示が続いている帰還困難区域と、事故後5年前後を経て避難指示が解除された居住制限区域及び避難指示解除準備区域については、これまでに避難指示の期間に応じて東電が支払ってきた月額10万円の賠償の他に、1人150万円の慰謝料支払を命じました。事故後数か月で避難指示が解除されている緊急時避難準備区域については、同様に1人70万の慰謝料を認めました。
 これは、既払いの金額と合わせれば、それぞれ1600万円・1000万円・250万円になるのですが、上記のような避難生活の著しい困難と、地域での生活の一切を奪われたことによる無形の損害を含めた精神的損害の全てを評価したものとして、あまりにも過小なものだと思います。法廷で、口々に「人生の全てを失った」と訴えた原告らの思いは、裁判所には届かなかったようです。

国の帰還政策への追従

 このような裁判所の傾向は、ほかの集団訴訟でも共通しています。国が定めた賠償の「指針」に対して、その対象となる避難者の範囲についても、賠償の金額についても、不十分であると認めつつ、その救済の水準において、被害の実情に見合った認定をしないという消極的な姿勢です。
 このような姿勢の原因は何なのかを考える必要がありそうです。そうでないと、「戻りたいけど戻れない」でいる大半の避難者にとって、生活の再建が実現しないからです。

4度国を断罪 福島原発被害東京訴訟判決(2018/3/16)について

弁護士 吉田 悌一郎

1.はじめに

 本年3月16日、私と髙橋右京弁護士が代理人となっている福島原発被害東京訴訟について、東京地方裁判所民事第50部は、国の責任を認め、被告である国と東京電力に対し賠償を命じる判決を言い渡しました。
 この訴訟は、2011年3月11日に発生した東京電力福島原発事故により、福島県内から東京都内へ避難を余儀なくされた原告らが、国と東京電力を被告として、2013年3月11日に提訴した訴訟です。

2.原発事故に対する国の責任が認められる

 本判決では、まず、被告国は、福島第一原発について炉心溶融に伴う重大事故をもたらす原発の敷地高を超えて敷地が浸水する津波が発生することを予見できたと判断しました。その上で、国が東京電力に対して技術基準適合命令を発して原子炉施設の安全性を確保する権限を行使していれば、本件事故の結果を回避できたとして、原発事故に対する国の責任を認めました。
 本判決は、昨年3月の前橋地裁、10月の福島地裁、本年3月15日の京都地裁に続いて、4度、司法の場において、福島原発事故について被告国及び被告東京電力の加害責任を明確にし、断罪したものです。

3.区域外避難者についての賠償が認められる

 さらに、本判決は、いわゆる政府による避難指示のあった区域以外の地域からの避難者(区域外避難者)についても、放射性物質の汚染による健康への侵害の危険が一定程度あるとして、避難することに合理性があると判断しました。
 これらの点については、大きな前進を勝ち取った判決と言えるでしょう。

4.賠償額については不満の残る判決

 しかしながら、本判決は、その区域外避難者について、避難を継続する合理性のある期間として、原則として2011年12月まで(ただし、子どもと妊婦は2012年8月まで)に限定してしまっている点がまず問題です。区域外避難者である原告らの自宅・避難元も、現在においても土壌の放射能汚染が酷い場所があるなど、いまなお、放射線被ばくのリスクがあるのです。そうしたリスクを回避するための避難の期間を極めて短く限定してしまっていることは、区域外避難者の被害の実態を正しく判断したものとは到底言えません。
 さらに、本判決では、区域外避難者について一定の賠償額が認容されたものの、認められた賠償額(慰謝料額)では、原発事故被害者が被っている様々な損害を回復するためにはなお不十分であると言わざるを得ません。すべての原発事故被害者に対して適正な賠償を実現することは本判決においても、なお克服すべき課題です。

5.原発事故被害者の全面救済を

 福島原発事故から既に7年が経過しましたが、未だ多くの人々が避難を余儀なくされており、被害者の被った甚大な被害の回復や適正な賠償が実現していません。本判決を含むこれまでの各判決において、国や東京電力の加害責任が司法の場でも明らかとなりました。今、国や東京電力が行うべきは、被害者の切り捨てではなく、加害責任を前提にした原発事故の過酷な被害実態を踏まえた完全賠償の実現と、生活圏の原状回復を含む生活再建のための諸施策の実現のために尽力することです。
 今後、舞台は東京高等裁判所に移ることになりますが、引き続き原発事故被害者の全面救済のために活動を続けて行きますので、よろしくご支援をお願いいたします。

平和な日本をつくるために ~憲法9条改憲へ NO! の声を~

弁護士 山田 聡美

 安倍首相は、憲法9条に自衛隊を明記しようとしています。
 私たちは、これに反対しています。

憲法9条を変えるデメリット

①自衛隊員の命が危ない!
 自衛隊は、災害救助のイメージが強いですが、実際にはアメリカなどと軍事共同訓練をしていますし、イラク戦争や南スーダンなど危険な場所へ派遣されたこともあります。
 憲法9条に自衛隊を明記されてしまったら、自衛隊は、アメリカと一緒に海外へ行って武力行使する活動をより一層広げることになるでしょう。
 そうなれば、自衛隊員の命は今以上に危険にさらされてしまいます。

②日本が危ない!
 また自衛隊がアメリカと一緒に海外へ行けば、「日本もアメリカと一緒で敵だ」と思われてしまい、日本が海外からの攻撃の標的とされてしまう危険も大きくなります。

日本の安全は平和外交から

 紛争は武力では解決しません。いったん戦争が始まってしまえば、多くの人の命が奪われることは明らかです。
 憲法9条で、戦争をしない・戦力(軍隊)をもたないと決めた日本だからこそできる平和外交があります。紛争解決のための話し合いに尽力することが、朝鮮半島問題をはじめ世界の平和に日本が貢献できる唯一の方法だと考えます。

署名へご協力を!

 安倍首相による憲法9条改憲に反対する署名を集めています。署名用紙を同封いたしますので、ぜひご協力いただき、ご署名の上ご返送ください。
 署名が広がれば、改憲を具体化することは難しくなりますから、9条改憲阻止のための大きな力となります。
 すでにご署名いただいた方は、ぜひご家族や周りの方にもお声がけください。
 自衛隊員の命を守り、平和で希望のもてる日本を作るために所員一同、力を尽くしてまいります!

【Q & A】遺留分

Answer/ 弁護士 米倉  勉

 私の家族は、父、母、兄(長男)、私(長女)の4人ですが、先月、父が亡くなりました。父は、生前、父の全財産を兄に相続させる旨の遺言を残していたのですが、この遺言が有効だとすると、私には父の財産を相続する権利が全く無いのでしょうか。

 死後の財産処分は遺言によって自由に決めることができますが、一定の法定相続人(遺留分権利者)の生活の安定を図る必要などがあることから、遺言の内容にかかわらず、こうした方々に一定割合の相続財産(遺産)の承継を保証する「遺留分制度」(民法1028条以下)という制度があります。

 この遺留分権利者というのは、兄弟姉妹以外の法定相続人となります。遺産に占める遺留分全体の割合(総体的遺留分)は、①直系尊属(親、祖父母など)のみが相続人である場合は遺産の1/3、②それ以外の場合は遺産の1/2、とされており、この総体的遺留分を法定相続分に従って配分したものが各遺留分権利者が有する遺留分(個別的遺留分)となります。

 ご相談のケースでは、法定相続人が母と子2人なので上記②にあたり、お父さんの遺産の1/2が総体的遺留分となります。そして、あなたの法定相続分は1/4なので、総体的遺留分の1/4、つまり、お父さんの遺産の1/8(1/2×1/4)があなた固有の遺留分となります(なお、お母さんの遺留分は1/4〔1/2×1/2〕となります)。

 したがって、あなたにはお父さんの遺産の1/8を承継する権利(遺留分)があります。全財産をお兄さんに相続させる旨のお父さんの遺言は、あなたの遺留分を侵害していることになります。

 もっとも、遺留分を侵害する財産処分が当然に無効となるわけではなく、相続の開始後一定期間内に、遺留分権利者が権利行使(遺留分減殺請求)をすることが必要となります。期間内にあなたがお兄さんに対して遺留分減殺請求をして、はじめてあなたの遺留分(1/8)が保証されることとなるのです。

 この期間は「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間」(もしくは「相続開始の時から10年」)と非常に限られているので注意が必要です。また、遺留分の割合や金額を算出することが困難なケースや、遺留分減殺請求をしたものの、任意の返還には応じてもらえず、調停や訴訟を提起せざるをえないケースも多々ありますので、「もしかしたら私には遺留分があるのでは」と疑問に思った段階で、なるべく速やかに弁護士にご相談されることをおすすめします。